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神戸地方裁判所 昭和39年(行ウ)5号 判決 1966年4月30日

原告 畑梶之助 外一〇名

被告 姫路東税務署長

訴訟代理人 叶和夫 外四名

主文

原告らの請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事  実 <省略>

理由

一、請求原因第一ないし四項の事実は、第一項中贈与契約のなされた日時、第二項中原告らが各受領した売買代金額を除き、当事者間に争いがない。

<証拠省略>によると右贈与契約は昭和三四年五月一二日になされたこと、弁論の全趣旨によると本件土地の売買代金の受領額は原告畑梶之助が六七万六九二〇円、その余の原告らは六七万六九〇八円と認められ、右認定に反する証拠はない。

なお、本訴提起後神飾税務署が、姫路東税務署と変更されたことは当事者間に争いがない。

二、弁論の全趣旨によると、本件各更正処分の内容は被告主張のとおり(被告の答弁第三項(イ)記載のとおり)のものと認められ、右認定に反する証拠はない。従つて右各更正処分は、本件土地の持分の贈与を本件土地の売買代金の贈与と誤つて認定してしたものとする原告らの主張は採用できない。

三、前認定のとおり、原告畑梶之助から原告畑はつ子外九名に対する本件土地持分の贈与のなされたのは昭和三四年五月一二日であるが、当時本件土地は農地であつたから、右贈与によりただちに権利は移転せず、原告畑梶之助が農地法第五条により県知事に対し農地転用のための権利移転の申請をし、県知事より許可のあつた前記昭和三五年一二月七日に、右与による持分権の移転があつたというべきで、所得税法第五条の二第一項、相続税法第二二条(いずれも昭和三五年当時施行のもの)に「贈与の時」というのも、右のような場合には「贈与による権利の移転があつた時」と解すべきものであるから、神飾税務署長が本件各更正処分につき本件各贈与の時を昭和三五年一二月九日と認定したのは結局相当であつて、何等違法の点はない(もともと本件贈与の日を右一二月九日と認定したのは原告らの納税申告が同日付となつていたもので、二日(一二月の七日と九日)の相違は、不動産の時価の算定上何等影響のないものと認められるから右二日間の相違でもつて更正処分を違法視する必要はない)。

四、<証拠省略>を綜合すると、一般に、国税局としては、譲渡所得、贈与税の課税標準となる土地の価額の査定については、第一に賃貸価格に一定の倍率をかけたもの、第二に路線価方式(都市の路線に面した土地について売買実例を集め、これで標準地価格を求めて、その各土地に面している路線に路線価を設け、これによつて附近の土地の評価をする方法)、第三に特別事情で土地価額が高騰したような場合には現実の売買価格(当該土地の売買がなされなかつたときは近傍土地の売買価格)によることの三つの査定方法を併用していたが、神飾税務署長が、原告らの前記納税申告について調査したところ、本件土地は国道二号線に面し、昭和三五年頃には急に地価が高騰したため、賃貸価額に一定の倍数をかける査定方法で本件土地の価額を査定することは不適当な状況にあり、当時本件土地には路線価が定められて居らず、右贈与(昭和三五年一二月七日)に近接した時期に本件土地が売却され、右売買については原告らと売却先である訴外三菱石油等との間に、すでに相当以前から本件土地の売買の交渉があり、昭和三五年九月頃にはすでに本件土地の売買価格が決められていたとの事情も認められたため、同署長としては畑梶之助の前記みなし譲渡価格、原告畑はつ子外九名の贈与額については、大阪国税局長の指示に従い、現実の売買価格たる前記一、四八九万二〇〇〇円の売買価格をもつて本件土地の価格とする前記三つの査定方法のうち売買価格による査定方法を採用し、前記各更正処分をしたこと、本件土地の売買価格は当時としても他に比較して特に高い価格でもないこと、原告らの前記納税申告について、神飾税務署職員が指示してさせたものでもないこと、

等の事実が認められ、右認定に反する証人永田利雄の証言は信用できないし、他に右認定を左右するに足る証拠はない。

右事実によると、神飾税務署長が、本件土地の売買価格により右贈与当時(昭和三五年一二月七日)の本件土地の価格を査定したのは、結局相当であつて、本件土地の賃貸価格に一定の倍数をかける方法ないしは路線価方式で、本件土地の価額を認定しなかつたから本件更正処分は違法であるとする原告らの主張は採用し難い。

他に前記各更正処分を違法と認めるに足る事由の主張はない。

五、してみると、本件請求はいずれも理由なきに帰するから、これを棄却することとし、訴訟費用につき民訴法第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 森本正 菊地博 保沢末良)

別紙<省略>

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